『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』レビュー

 広島の原爆ドームのように原爆の傷を語る貴重な遺産となるはずだった長崎の浦上天主堂。なぜ浦上天主堂は取り壊されたのかに迫るノンフィクション。

 浦上のキリシタンの歴史や長崎に原爆が落ちる過程にもふれ、浦上の原爆を語る上での貴重な情報、写真に溢れている。
 後半では戦後の長崎がなぜ浦上天主堂の取り壊しを選んだのか、永井隆の言葉や田川市長の訪米とその後の心変わりを通してアメリカの関与を探っていく。ただ、50年の月日もあり、このアメリカの関与は状況証拠的なものしかなく、少し肩透かし感も感じた。
 しかし、それでもこの本が長崎の苦悩を考える上で貴重な資料であることは変わりない。長崎にはキリスト教徒と非キリスト教徒に二分される長崎ならでは事情と苦悩があったのだと思う。

 長崎には原爆ドームのような象徴的な建造物はない。しかしかすかに残る建造物の跡とそれらを巡る歴史を考えると、形はないが象徴としての浦上天主堂が長崎に見えてくる。 

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